麻酔に対する当院の考え方

麻酔は「怖いもの」との印象をお持ちの方が多いと思います。
それは正しい認識だと思います。私たちにとっても「怖いもの」です。
全身麻酔の場合は、「意識の消失と無痛状態」になります。
すなわち「死」に近い状態です。そこだけ考えれば、決して望ましいことではありません。

なぜ、”怖い”麻酔をかけるのか?

「意識の消失と無痛状態」が得られるからです。
この状態では、動物は恐怖と痛みを感じていません。
この間、動物が苦痛を感じることなく医療行為が受けられます。
麻酔をかけて行う処置は麻酔をかけないと行えない処置です。

実際の麻酔手技

麻酔薬は注射とガス麻酔を組み合わせて投与します。その他に鎮静剤、鎮痛剤を同時に使って、なるべく身体に負担と危険がかからないように配慮しながら麻酔管理を行います。使用する薬剤と投与方法は、動物の種類、年齢、大きさ、性格、健康状態、麻酔中の処置の内容、想定される麻酔時間などあらゆることを考慮の上で決定しています。
麻酔中は生体モニターを装着し、心拍数、呼吸数、血圧、心電図、SpO2、酸素濃度、吸入麻酔薬濃度、カプノグラム、呼気二酸化炭素濃度、などを確認しながら維持管理し、変化があれば必要に応じて対応しています。

大丈夫でしょうか?

普通の健康なコであればほぼ大丈夫です。でも残念ながら100%ではありません。

局所麻酔ではできないのですか?

「処置内容により」です。
動物が「長い間、大人しく動かないで」いてくれないと処置ができません。
局所麻酔は「痛覚の消失」は得られますが、「意識の消失」は得られません。
つまり、処置中に恐怖や我慢は感じ続けます。却って負担が大きくなることもあります。
ただ、局所麻酔でできれば、危険は全身麻酔に比べれば小さいです。

結語

「麻酔は怖い」「麻酔は危険」「麻酔をかけないで済めばそれが望ましい」
皆さんが感じているこの感覚は私も持っていますし、今後も持ち続けたいと思っています。
しかし、過剰に怖れ過ぎても適切な治療のタイミングを逃すことになります。
「交通事故に遭うのが怖いから外出を控える」のは望ましいことではないです。

当院では、麻酔をかける危険と行うべき処置の必要性を適切に比較し、十分検討した上でその動物にとって最善の麻酔を実施しています。